フィジカル
エニタイム梅田中津で、柔術のための体を週2回で作る
柔術3か月目・週2〜3回の練習と両立できる筋トレと有酸素の設計。根拠は、2026年に17年ぶりに改訂されたACSM(米国スポーツ医学会)のレジスタンストレーニング指針、柔術選手の体力プロファイルをまとめた系統的レビュー、週あたりセット数と筋肥大のメタ分析。マシンは梅田中津店にあるものだけを使う。
01先に結論
週2回、1回45〜60分(5種目の合計)。全身を毎回やる。種目は「脚を押す・縦に引く・横に引く・押す・握る」の5つ+有酸素の間欠運動。重さは「あと2〜3回できる」ところで止め、限界まで追い込まない。柔術の直前と、柔術の前日の握力種目は避ける。
用語
- RIR
- Reps In Reserve。「あと何回できる余裕を残して止めるか」の数。RIR 2〜3 は「10回やった時点で、頑張ればあと2〜3回はできる」と感じる重さと回数で止めること。限界の1回手前が RIR 1、限界まで潰れるのが RIR 0
- 3セット × 8〜12回
- 8〜12回を1セットとして、セット間に90秒〜2分休み、3回繰り返す。1種目あたり約6〜8分
- 1RM
- 1回だけ挙げられる最大の重さ。実際には測らず、10回できる重さから推定する(下の「重さを決める」)
なぜこの形か(根拠)
- 週2回・全身
- ACSM 2026 主要筋群を週2回以上。筋肥大は「週あたり合計セット数」で決まり、頻度の差は総量が同じなら影響しない。柔術と両立するなら2回に集約するのが現実的
- 筋群あたり週10セット
- Schoenfeld ら/ACSM 2026 週10セット以上で筋肥大が大きい(用量依存)。2日×主要種目3セットで、脚・背中・胸がそれぞれ週9〜12セットになる設計
- 8〜12回・RIR 2〜3
- ACSM 2026 「限界まで追い込むこと」は結果に一貫した影響がない。初心者はそもそも限界の見積もりが甘いので、余裕を残すほうが安全で継続しやすい。筋力(最大筋力)を狙うなら80%1RM以上・2〜3セットだが、柔術と両立する段階ではまず筋肥大帯で
- 握力を別枠で
- 柔術選手の系統的レビュー 握力48〜57kgf、道着ぶら下がり54〜62秒、道着チンニング15〜18回が競技者の水準。試合後に最も疲労を訴える部位が前腕。著者らは前腕の屈筋・伸筋を狙った専用プロトコルを推奨
- 有酸素は間欠
- 同レビュー 柔術は高・中・低強度が混ざる間欠運動。最大酸素摂取量は42〜52で競技レベルを分けないが、下限は要る。長時間一定より短い全力の繰り返し
- 柔術との間隔
- 同時トレーニングの知見 筋トレと持久系を同じ日にやると、間隔が短いほど筋力の伸びが鈍る(干渉)。柔術のない日か、柔術の翌日に。柔術の直前はやらない
02最初の週にやること: 重さを決める
「何キロ」は体重と経験で全く違うので、表の数字をそのまま使わない。初回に各種目で「10回できる重さ」を探し、それを基準にする。
手順
- 軽い重さで10回(ウォームアップ)。次に少し重くして10回。これを繰り返し、「10回目がきつく、あと2回ならできる」重さを見つける。3〜4セットで見つかる
- その重さを「10回の基準重量」として記録する。推定の最大挙上重量(1RM)は 基準重量 × 1.33(Epley 式)。例: 10回できる重さが60kgなら、1RMは約80kg
- 本番の重さは、8〜12回の帯なら基準重量そのまま。6〜10回の帯なら基準重量の1.1倍。10〜15回の帯なら0.9倍
- 2週目以降: 全セットで回数の上限に届き、かつ「あと2回できる」余裕があったら、次回2.5〜5kg増やす(二重進行)。届かなければ同じ重さで続ける
目安(体重70kg・筋トレ未経験〜半年の男性の場合。あくまで初回の探索の出発点)
| 種目 | 探索の開始重量 | 3か月後の目安 |
|---|---|---|
| レッグプレス(45°) | 60〜80kg | 120〜160kg |
| ハックスクワット | 20〜40kg | 60〜90kg |
| ラットプルダウン | 35〜45kg | 55〜70kg |
| シーテッドロー | 35〜45kg | 55〜70kg |
| チェストプレス | 30〜40kg | 50〜65kg |
| ショルダープレス | 15〜25kg | 30〜40kg |
| レッグカール | 25〜35kg | 40〜55kg |
| アシストチンニング(補助) | 補助 30〜40kg | 補助 10〜15kg |
| ファーマーズウォーク | 片手16〜20kg | 片手28〜32kg |
マシンは機種で目盛りの意味が違う(同じ「50kg」でも重さが違う)ので、数字は自分のマシンでの相対値として使う。柔術選手の研究値(ベンチプレス1RM 体重の1.3〜1.5倍、デッドリフト1.7倍)は黒帯・競技者の水準で、3か月目の目標ではない。
03A日: 脚・縦引き・押し・横引き・握る
順番はこの通り。大きい筋肉から、握力は最後(先にやると引く種目の握りが持たない)。セット間は90秒〜2分。1種目あたり6〜8分で、5種目の合計が45〜55分(ウォームアップ込み)。

レッグプレスLEG PRESS
使うもの: 45°レッグプレス
3セット × 8〜12回、RIR 2〜3(あと2〜3回できる余裕で止める)。約7分
柔術の「ブリッジ」「エビ」「立ち上がり」は全部、股関節と膝を伸ばす力。下半身の最大筋力の土台。スクワットより覚えることが少なく、フォームの失敗で腰を痛めにくい。
- 足は肩幅、つま先やや外。膝がつま先と同じ向きを保つ
- 下ろすときに腰(お尻)がシートから浮いたら深すぎ。そこまでで止める
- 伸ばし切って膝をロックしない

ラットプルダウンLAT PULLDOWN
使うもの: ラットプルダウン(フロントラット)
3セット × 8〜12回、RIR 2〜3。約7分
第一章の「引く」は広背筋。「腕を伸ばしたままの引きは力が入らない。肘を折り脇を締めて引く」がそのまま種目のフォーム。柔術で最も使う筋肉を、最も安全に重くできる種目。
- 胸を張り、肘を脇腹に引き寄せる。バーを鎖骨の少し下まで
- 戻すときに肩をすくませない(肩をすくめたまま戻すと広背筋から抜ける)
- 握りは親指を巻かないサムレスでも可。握力は別種目で鍛える

チェストプレスCHEST PRESS
使うもの: マルチプレス(マシン)
3セット × 8〜12回、RIR 2〜3。約7分
ガードブレイクの「押しながら立つ」、マウントの「体重を乗せる」、フレームで「押し返す」の力。ベンチプレスより安全で、補助なしで限界近くまで追い込める。
- 肩甲骨を寄せて下げ、胸を張ったまま押す
- 肘は体から45度くらい。真横に開かない
- 戻しは2秒かけてゆっくり(離心局面を強調するとACSM 2026 で筋肥大に有利)

シーテッドローSEATED ROW
使うもの: ラットプルダウン/シーテッドロー、D.Y.ロー、アイソロウのどれか
3セット × 10〜15回、RIR 2〜3。約7分
水平に引く力。襟を引いて相手の頭を下げる動き、アンダーフックで相手を引き寄せる動きに直結。ラットプルダウン(縦)とセットで背中を両方向から鍛える。
- 胸を張ったまま、肘を後ろに引く。上体を倒して反動を使わない
- 引き切ったところで肩甲骨を寄せて1秒止める
- アイソロウ(片手ずつ)なら左右差が分かる。弱い側を先にやる

ファーマーズウォークFARMER'S WALK
使うもの: ダンベル(片手16〜24kgから)
3セット × 30〜40m(または40秒)、持てなくなる手前で置く。約5分
柔術選手の握力は48〜57kgf、道着を掴んだぶら下がりは54〜62秒が報告されている水準。握力は「握って耐える」力で、ダンベルを持って歩くのが最も単純で効く。前腕の疲労は試合後に最も強く出る部位。
- 肩をすくめず、胸を張って歩く。腕は伸ばしたまま
- 置くときはしゃがんで置く。落とさない
- タオルをダンベルのハンドルに巻くと道着の握りに近づく
04B日: 脚(別角度)・引き上げ・肩・ハム・握る
A日と同じ5つの動きを、別の種目で。同じ筋肉に違う角度の刺激が入り、片方のマシンが空いていなくても回せる。こちらも5種目の合計で45〜55分。

ハックスクワットHACK SQUAT
使うもの: ハックスクワット
3セット × 8〜12回、RIR 2〜3。約7分
レッグプレスと同じ狙いを、より立った姿勢で。腰切り・ヒップバンプの「腰をぶつける」動きは股関節の伸展。レッグプレスと週で交互にやると刺激が変わる。
- 足は肩幅より少し狭く、プラットフォームのやや前
- 膝が内に入らないように。太ももが床と平行まで
- 痛みが出る深さまで下ろさない

アシストチンニングASSISTED CHIN-UP
使うもの: アシストディップ/チン
3セット × 6〜10回、RIR 2。約7分
自分の体重を引き上げる力は、相手にぶら下がる・登る動き(第一章「ロープを登る要領で引く」)そのもの。柔術選手の道着チンニングは15〜18回が目安。補助を減らしていくと進歩が数字で見える。
- 補助の重さは「6回できるところ」から。毎週5kgずつ減らす
- 胸をバーに近づける意識。顎だけ上げない
- 下ろしは肩が抜けきる手前で止める(怪我防止)

ショルダープレスSHOULDER PRESS
使うもの: ショルダープレス(マシン)
3セット × 8〜12回、RIR 2〜3。約7分
ガードブレイクで「肩から引き上げる」「頭を上げる」姿勢を保つ力、フレームで相手の体重を受ける力。肩は柔術で怪我が多い部位なので、マシンで安全に。
- シートは高さを合わせ、ハンドルが肩の高さから始まるように
- 腰を反らない。腹に力を入れて
- 痛みが出る可動域は使わない

レッグカールLEG CURL
使うもの: プローンレッグカール
3セット × 10〜15回、RIR 2〜3。約7分
ハムストリングは、かかとをお尻に引き寄せてブリッジする力(第三章「かかとを後ろに引く」)と、膝の安定。柔術は膝の怪我が最多部位。前腿(レッグプレス・ハック)とのバランスを取る。
- 腰を反らずに、うつ伏せのまま。お尻が浮かない
- 上げ切ったところで1秒止める
- 戻しをゆっくり

ダンベル・ぶら下がり(タオル)TOWEL HANG
使うもの: パワーラックの懸垂バー+タオル
3セット × 20〜40秒、落ちる手前で降りる。約5分
道着を握って耐える力は「静的な握力持久力」。タオルをバーにかけて両端を握ってぶら下がると、道着の襟を持つ感覚に近い。柔術選手の道着ぶら下がりは54〜62秒が目安。
- 最初は片足を床に残してよい。徐々に足を離す
- 肩をすくめず、肩甲骨を軽く下げて
- 前腕がパンパンになったら終了。翌日の柔術に影響するので、柔術の前日はやらない
05有酸素: 間欠運動を週1〜2回
筋トレの日の最後に8分のバイク・インターバル、または別の日に傾斜歩行20〜30分。両方はやらなくていい。

バイク・インターバルBIKE INTERVALS
使うもの: アップライトバイク/リカンベントバイク
20秒全力 → 40秒ゆっくり × 8本(計8分)、週1〜2回
柔術の試合は5〜10分の中に、数秒の全力と数十秒の低強度が混ざる間欠運動(活動と休息の比はおおむね6:1と報告)。長時間の一定ペースより、短い全力を繰り返す形が競技に近い。バイクは膝への衝撃がなく、柔術の翌日でもやりやすい。
- 全力の20秒は「話せない」強度。40秒は「話せる」強度
- 8本できなければ6本から。毎週1本足す
- 柔術の直前にはやらない(技の練習の質が落ちる)

トレッドミル・傾斜歩行INCLINE WALK
使うもの: トレッドミル
傾斜8〜12%、時速5〜6km、20〜30分、週1回
柔術選手の最大酸素摂取量は42〜52 mL/kg/分で、これは競技レベルの差にはならないが「5分動き続けられる土台」として要る。傾斜歩行は膝・腰に優しく、翌日の柔術に響かない。
- 手すりを持たない
- 鼻で呼吸できる強度。息が上がるなら傾斜を下げる
- ジムに来た日の最後に入れる
06週の組み方
柔術が週2回なら筋トレも週2回、柔術が週3回なら筋トレは週2回のまま量を落とさず有酸素を減らす。合計で「きつい日」が週4回を超えないように。
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 柔術 週2の例 | ジムA | 柔術 | 休 | ジムB+バイク | 柔術 | 休 or 傾斜歩行 | 休 |
| 柔術 週3の例 | 柔術 | ジムA | 柔術 | 休 | 柔術 | ジムB+バイク | 休 |
守ること
- 柔術の直前に筋トレをしない。技を覚える練習は疲れていない体でやる(技の覚え方の「外的焦点」は疲労で崩れる)
- 柔術の前日は握力種目(ファーマーズ・タオルぶら下がり)を抜く。前腕の疲労は翌日まで残り、襟が握れなくなる
- 4週間やったら1週間は重さを2割落とす(ディロード)。伸びが止まった・関節が痛い、が出る前に入れる
- 睡眠は筋トレにも柔術にも同じ意味で要る。寝ている間に定着するのは技も筋肉も同じ
限界と注意
- ここの数値は健康な成人向けの一般指針と、柔術選手の平均値から組んだもので、個人の既往(膝・腰・肩)は考慮していない。痛みがある種目は飛ばす
- ACSM 2026 の推奨の多くは筋トレ未経験者を対象にした研究に基づく。経験者は効きが鈍るので、進行の速度を落とす
- 「柔術に筋トレが効く」ことを直接示した介入研究はほぼない。ここで示したのは「柔術選手はこういう体力を持っている」と「この方法で体力は上がる」の組み合わせ
07疲労と怪我の管理
3か月目は、一番やめやすく、一番怪我しやすい時期。柔術は6か月で59%が何らかの怪我を経験し、初心者ほど頭・肘・上肢が多い(附録一)。怪我の多くは「急に増やした週」と「寝ていない週」に起きる。
3つのルール
- 週の練習時間を前週の1.5倍以上にしない。柔術+ジムの合計で数える。例: 先週4時間なら今週は6時間まで。負荷の急増と怪我の関係は、急性:慢性負荷比(直近1週÷直近4週平均)が1.5を超えると怪我が増えるという報告(Gabbett 2016)に基づく。ただしこの指標は予測力が弱いという批判(Impellizzeri 2020)があり、「急に増やすな」以上の精密さで使わない
- 7時間半以上寝る。8時間未満の睡眠が続く若いアスリートは怪我が1.7倍(Milewski 2014、10代の研究なので大人は参考値)。睡眠は技の定着にも効く(附録二)ので、削るなら練習量のほうを削る
- 痛みが出た技は1週間抜く。「痛いけどできる」で続けると、庇った動きが別の癖になる。抜いた技は復習カレンダーで頭の中だけ回しておき、痛みが消えてから戻す
週に1回、3つだけ記録する
| 記録 | 書き方 | 黄信号 |
|---|---|---|
| 練習時間 | 柔術+ジムの合計(時間) | 前週の1.5倍以上 |
| 睡眠 | 平均時間 | 7時間未満が3日以上 |
| 痛み | 部位と「動かすと痛い/触ると痛い/常に痛い」 | 「常に痛い」が1か所でも |
黄信号が2つ重なった週は、ジムを1回抜くか、柔術をドリルだけにする。附録五の「力みと呼吸の記録」と同じ手帳に書く。
08参考文献
- Gabbett T.J. The training-injury prevention paradox: should athletes be training smarter and harder? British Journal of Sports Medicine 50 (2016). PubMed/Impellizzeri F.M. et al. Acute:Chronic Workload Ratio: Conceptual Issues and Fundamental Pitfalls. IJSPP 15 (2020). Human Kinetics
- Milewski M.D. et al. Chronic Lack of Sleep is Associated With Increased Sports Injuries in Adolescent Athletes. Journal of Pediatric Orthopaedics 34 (2014). Ovid
- American College of Sports Medicine. Resistance Training Prescription for Muscle Function, Hypertrophy, and Physical Performance in Healthy Adults: An Overview of Reviews. Medicine & Science in Sports & Exercise (2026). PMC/ACSM 解説
- Andreato L.V. et al. Physical and Physiological Profiles of Brazilian Jiu-Jitsu Athletes: a Systematic Review. Sports Medicine - Open (2017). PMC
- Schoenfeld B.J. et al. Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass. Journal of Sports Sciences (2017). NSCA 解説
- Schoenfeld B.J. et al. Loading Recommendations for Muscle Strength, Hypertrophy, and Local Endurance: A Re-Examination of the Repetition Continuum (2021). PMC
- ACSM Position Stand. Progression Models in Resistance Training for Healthy Adults (2009). PubMed
- Jones N.B., Ledford E. Strength and Conditioning for Brazilian Jiu-jitsu. Strength & Conditioning Journal 34 (2012). Semantic Scholar
- エニタイムフィットネス梅田中津店 マシンラインナップ. anytimefitness.co.jp