立ち技と引き込み
試合は立って始まる。白帯が最初に決めるのは、自分から引き込んでガードを作るか、倒しにいくか、倒されないように守るか。この章は引き込み2節、立ち技の守り2節、倒す技1節。どれも「ズボンを持たせない」「足の位置を高くする」「背中を見せても膝を下に向ける」のような、一瞬の形で勝負が決まる技。ルールは序章と日本ブラジリアン柔術連盟の日本語版ルールブック(2024年6月版)で確かめた。
01立ち技の原則
(引き込むか、倒すか、守るか)
立った状態からの選択肢は3つ。道着をつかんでから引き込む、タックルやドラッグで倒す、相手のタックルから逃げる。白帯のうちは、引き込みを1つ確実にして、タックルを受けたときの逃げ方を1つ持っておくのが先。
入口と出口
- 入口
- お互いが立って向き合い、組み手を争っている
- 出口
- 自分のガードに入れている(引き込み)、上を取っている(テイクダウン)、または倒されずに離れている(守り)
相手役に起きること
- 道着をつかまれる
- 引き込まれるか、倒されるか、タックルを外される
- ガードの中に入るか、下になるか、離される
手順(完全版)
- 組み手を取る。相手の襟か袖、または両手で相手の手をつかむ
- 引き込むなら、座る前に相手の手がズボンにかかっていないかを確かめる
- 引き込むか倒すかを決めたら迷わない。途中で止まると、パスされるか倒される
- タックルに来られたら、足を取られた瞬間の形で逃げ方を選ぶ(第四節・第六節)
コツ・原理
- 引き込みで一番パスされやすいのは、座った直後に背中をマットにつける一瞬。第二節・第三節はこの一瞬の守り方
- 立ち技は道場で練習する時間が少ないことが多い。知らないと、足を取られただけで簡単に倒される
- 点数の付き方は序章 第二節。テイクダウン2点、スイープ2点、パスガード3点
よくある間違い・注意
- 道着をつかまずに座り込む(反則)
- ズボンを持たれたまま引き込む(相手にテイクダウンの点が入る)
- 引き込むか倒すか迷って、中途半端な姿勢で止まる
02ガードへの引き込み
(際が肝心)
引き込みは、座るまでより、座ってから背中をつけるまでが危ない。座るときは左手・膝・右足の3点をそろえて前傾し、相手との距離を作る。背中をつけるときは足を高く上げて相手の肩に当て、両手で襟を握る。これで最初のガードができる。
入口と出口
- 入口
- 立って組み手を取り、相手の襟(または袖)を持った
- 出口
- 背中をつけた状態で、両足が相手の肩か腰に当たり、両手で襟を握っている。ここから片襟片袖などのガードへ移る
相手役に起きること
- 襟を持たれ、相手に座られる
- 手を前に突き出されて距離を作られる
- 肩に足を当てられ、両手で襟を握られて、横に回れない

動画は相手が右足前の場合と左足前の場合を順に見せている。秒数は字幕の時刻から取った目安で、前後2秒ほどずれることがある。
手順(完全版)
- 相手の構えを見る。相手が右足前なら、右手で相手の右襟を持つ。襟を持たせない相手には、両手で相手の手をつかむ
- 左手・膝・右足の3点をそろえて座り、前傾して手をパンチするように前へ突き出す。相手との距離ができ、安全に座れる
- 背中をつける。ここで一番パスされやすいので、足は必ず相手の腕の外側から回し、高く上げて相手の肩のあたりに当てる
- 足を当てると同時に、両手で襟を握る。相手は襟のグリップを切れず、立って横に回れない
- ここが最初のガード。袖が持てたら片襟片袖、足が持てたらデラヒーバなど、作りたいガードに移る
- 相手が左足前で、作りたいガードと逆側になったら、背中をつけたまま、両手を同時には離さず、1本ずつ左右の襟を持ち替える
コツ・原理
- 引き込み際はパスガードを狙われる瞬間。道場の練習で雑に引き込む癖がつくと、試合でそのままパスされる
- 袖を持って引き込んだときは、座ってからもう片方の手を袖に持ち替えると、片足を肩、片足を腰に当てるだけでも守れる
- 最初のガードができれば十分。そこからどのガードに移るかは、第八章 オープンガード入門で扱う
よくある間違い・注意
- 背中をつけたときに足の位置が低い
- 足を相手の腕の内側から入れて、落とされる
- 片手だけで襟を持ち、グリップを切られる
03パスされない引き込み
(2種類)
引き込んだ直後にパスされる、座る途中でテイクダウンされる、を防ぐ引き込み方が2つある。組み合ってから引き込むときは、襟を持った側の足から相手の腰に当て、足を横に大きく開いてズボンを持たせない。投げの強い相手には、つかんだ瞬間に座り、頭を前に出してズボンを持たせない。
入口と出口
- 入口
- 襟と袖を持ち合った状態、または投げの強い相手と組んだ瞬間
- 出口
- ズボンを持たれないまま座り、足が相手の膝か肩に当たって、片襟片袖などのガードができている
相手役に起きること
- 腰に足を当てられる
- 足を大きく開かれ、ズボンに手が届かない
- 膝か肩に足を当てられ、ガードの中に入る

動画は前半が組み合ってからの引き込み、後半が投げの強い相手への引き込み。秒数は字幕の時刻から取った目安で、前後2秒ほどずれることがある。
手順(完全版)
- 組み合ってから引き込む場合: 襟と袖を持ち合う。袖は袖口を持つ
- 襟を持った側の足から、相手の腰に当てる
- 座りながら、足を真横に大きく開く。相手の手がズボンに届かないくらい離す
- 近づくときは、足を相手の膝か肩に当てる。片襟片袖のガードができる
- 投げの強い相手の場合: 低く構えて襟をつかみ、つかんだ瞬間に座る
- 座り込むときは、ふわっと座らない。体をまっすぐにして一気に座り、頭を前に出し、手を前に突き出す
- 背中をつけるときは、両手で襟を持って引きつける。足が当たっているので、相手は足を落とせない
- ここまでできたら、袖を持ち直して片襟片袖などのガードにつなぐ
コツ・原理
- どちらの引き込みも、要点は「相手にズボンを持たせない」。ズボンを持たれたまま引き込むと、パスされやすいうえに、相手にテイクダウンの点が入る(第一節)
- 足をまっすぐ前に出したまま引き込むと、その足を押さえられてすぐパスされる
よくある間違い・注意
- 袖を持った側の足から当てて、その足を払われる
- 足を開かずに座り、ズボンを持たれる
- ふわっと座って、座る途中でパスされる
04片足タックル
(シングルレッグ)を受けたら
足を1本取られたら、まず膝を下に向ける。膝が上を向いていると足は軽く、持ち上げられて倒される。膝を下に向けるには相手に背中を少し見せることになるので、手でバックを取られないように守りながら、相手の頭の位置で逃げ方を選ぶ。
入口と出口
- 入口
- 立った状態で、相手に片足を取られて持ち上げられた。座った状態から相手が浮き上がってタックルに変えてきたときも同じ
- 出口
- 足が抜けて相手から離れている。倒されていない
相手役に起きること
- 取った足が重くなる
- 頭を突き放されるか、腕を小手に巻かれる
- 足を跳ね上げられ、ホールドが緩んで足が抜ける

動画は相手の頭が押せる場合と押せない場合を順に見せている。秒数は字幕の時刻から取った目安で、前後2秒ほどずれることがある。
手順(完全版)
- 片足を取られたら、取られている足の膝を下に向ける。そのために、相手に背中を少し見せる向きになる
- 背中を見せるとバックを取られる危険がある。相手の頭の位置を見て、次の2つから選ぶ
- 相手の頭が低い・押せる場合: 腕をまっすぐ伸ばして相手の頭を突き放す
- 突き放したまま小さくステップし、取られている足を後ろに蹴るようにして抜く。腕のフレームがあるので、相手は抱え直せない
- 相手の頭が高く押せない場合: 相手の腕を小手に巻く。これでバックに回られない
- やや前のめりになってバランスを取る。空いている手はいつでもマットにつけるようにする
- 柔道の内股のように、取られている足を思い切り跳ね上げる。できれば同時に相手の頭を押す
- 相手が手をついてホールドが緩んだら、足を抜いて離れる
コツ・原理
- 全部に共通するのは、背中を向けて膝を下にすること。膝の向きで足の重さが変わる
- シングルレッグは立ち技だけでなく、座ったガードから相手が浮き上がって仕掛けてくることもある
- 後ろに倒されるのが一番危ない。守るときは前のめりに
よくある間違い・注意
- 膝が上を向いたまま、足を引き抜こうとする
- 背中を見せたのに腕で守らず、バックを取られる
- 後ろに体重を残して、後ろに倒される
05カラードラッグ
座った状態から、膝立ちの相手の襟を引いて前に倒し、背中側に回って上を取る技。習ったとおりにやってもスパーで決まらないのは、仕掛けてはいけない形で仕掛けているから。相手が立っているとき、立てている足が崩す側と逆のとき、相手が同じ側の手で同じ側の襟を持っているときは、そのままでは決まらない。
入口と出口
- 入口
- 自分は座っていて、相手は膝立ちで体を起こしている
- 出口
- 相手が前に倒れ、自分がその背中側に回って上を取っている
相手役に起きること
- 対角の襟を持たれる
- 斜め前に引き出される
- 膝を止められて前に倒れ、上を取られる

動画は基本の形のあと、仕掛けてはいけない形と組み手の工夫を見せている。秒数は字幕の時刻から取った目安で、前後2秒ほどずれることがある。
手順(完全版)
- 体を起こした相手の対角の襟を、鎖骨の上あたりで持つ
- 相手を斜め前に引き出す
- 同時に、反対の手をマットについてお尻をずらし、相手が倒れてくる通り道を空ける
- 距離が合えば、自分の足で相手の膝を止めると、さらに前に倒しやすい
- 相手が倒れたら、背中側に回って上を取る
- 仕掛ける前に形を見る。相手が立っているとき、立てている足が崩す側と逆のときは、相手が足を前に出して戻ってくるので決まらない
- 相手が同じ側の手で同じ側の襟を持っていると、その腕が引っかかって流せない。このときは相手の腕の下に頭をくぐらせてから引く
コツ・原理
- 決まらない理由の多くは、自分がその場に留まって相手の通り道をふさいでいること
- やっていい形とやってはいけない形を覚えておくと、無理に仕掛けてカウンターでパスされることが減る
よくある間違い・注意
- お尻をずらさずに襟だけ引く
- 立っている相手に仕掛ける
- 相手の組み手を見ずに仕掛け、腕が引っかかる
06タックルを潰されたら
タックルを潰されて、首と腕を巻かれて上から押さえられたら、かなり苦しい。戻り方は3つ。まず相手の腕をつかんで足を大きく前に出し、横に回ってサイドバックにつく。無理なら頭を出して後ろに下がり、バタフライガードに戻る。バックに回られそうなら、肘を相手との間に入れてガードに戻す。
入口と出口
- 入口
- 自分のタックルを潰され、首と腕を巻かれて、上からお腹で押さえられている
- 出口
- 相手のサイドバックについている、またはバタフライガードに戻っている
相手役に起きること
- 腕の道着をつかまれ、頭で押し込まれる
- 横に回られて腰を抱えられる
- または、下がられてバタフライガードに入られる

動画は戻り方を3つ順に見せている。秒数は字幕の時刻から取った目安で、前後2秒ほどずれることがある。
手順(完全版)
- 潰されて首と腕を巻かれたら、スペースのある側を見つける
- その側の手で、相手の三頭筋あたりの道着をしっかり持ち、同じ側の足を立てる
- 反対の足を思い切り前に出しながら、頭で相手にプレッシャーをかける。相手が組んだままなら、そのまま転がせる
- 相手が手を離してマットについたら、自分の手を相手の腕の内側から通して腰を抱える。相手のサイドバックにつける
- 回れない場合は、頭を出してしゃがみ、手で押しながら後ろに下がる。足を相手の内ももに入れてバタフライガードにする
- 座り込むときは、脇を差されたまま座らない。お腹で潰されて首を痛めるので、脇を抜いて頭を出してから
- 相手が先にバックに回ってきたら、素早く肘を相手と自分の間に入れる。入れば、バタフライフックでガードに戻せる
コツ・原理
- 相手は脇の側に回ってくることが多い。首の側にはあまり回らない。回られる前提で、肘を入れる準備をしておく
- 肘が入るかどうかが分かれ目。入らなくても足をフックできればガードに戻せることもあるが、それは最後の手段
よくある間違い・注意
- 脇を差されたまま座り込む(首を痛める)
- スペースのない側に回ろうとする
- バックに回られるのを待ってから肘を入れようとして、間に合わない